ゆんたく・徒然 奥の深い沖縄。その沖縄をもっと知りたいヤマトの人々、
古里沖縄をあまり知らないと”ウチアタイ”するウチナーンチュ。
そんな方のお役に立てたらと願う、「青春」を謳うナイチャー、
NPOの一員です。

伊江島:島情話の里

沖縄が好きな人、なかでも風景や自然に強く惹かれる人は、沖縄行きのチケットを購入する時からその気持ちが行動に現れます。南風が吹く頃はA側の15番までの席に拘ります。
晴れてさえいれば、到着1時間前ぐらいから奄美諸島の島々がリーフに守られてのどかに浮かんでいる姿を見ることが出来ますよ。ファイナルアプローチに入り、細長い伊平屋島や長方形に近い伊是名島が見えてくると、「一度は行って見たい」の思いがよぎります。本島が視界に入ると伊江島上空に差しかかり、やがて飛行機は藍色の海原を這うように高度を保って、ブセナ、残波岬、嘉手納、北谷、牧港と、アーバン色を濃くしながら那覇空港に着陸です。泊大橋や那覇の街の姿は「クリティカル・イレブン」で緊張しているからでしょうかあまり印象に残らないようですね。
このように夏は毎回、伊江島を沖縄本島のポータルアイランドとして眺めながら那覇に降り立っています。また、本島西海岸をあまはい、くまはいして撮影を楽しんでいる時は、伊江島のほぼ中央にアパッチ砦のように岐立する172mの城山(通称「イータッチュー」)が遠くに、あるいは近くに見えて、自分の今居る場所が実感でき、心の安らぎを貰っています。琉球の大航海時代には海上の標識として多くの人々に親しまれた事が容易に想像できます。今月は伊江島をテーマにゆんたくしましょう。しばらく私の思い出にお付き合い下さい。初めて訪ねた01年はちょうど今頃で、前日から名護に泊まり本部側から島影を見つめました。それは「島情話」という歌に唄われた「ハンドー小(グワァ)」の面影(うむかじ)を探してみたかったからです。伊江島への関心はリリーフィールドのユリでもなければ、湧出(ワジー)の絶景でもなかったのが当時の私だったのですね。「二見情話」に惹かれ二見を訪ねた(バックナンバー「二見情話」参照)と同じように、「島情話」が私を伊江島へといざなったのです。
『恋しい人の生まれた島、伊江島に(苦労のあげく)心優しい船頭主に助けられて渡ったけれど、心変わりしたあの方は冷たい仕打ちで私を追い払う。千々に乱れた心で城山に登れば、ただただ涙。どうすればいいのか、戻るところもない、この島も異郷の地でしかない』ざっとこんな歌詞です。沖縄では珍しいマイナー調の、ウチナーグチたっぷりの歌謡曲に近い歌で、田場盛信さんの代表的ヒット曲の一つです。「びけい」「志情(しなさき)」「すそんすゆみ」「ちゃーすがー」などのウチナーグチを覚えましたよ。御大上原直彦氏の「浮世真ん中」によると実際にあった事件を扱った新聞のコラム「伊江島のローマンス」をもとにして名優真境名由康(まじきなゆうこう)さんが歌劇にした「伊江島ハンドー小」の歌版が「島情話」なのです。この歌劇は「泊阿嘉(トマイアカ)」「奥山の牡丹」とならび沖縄三大歌劇と称され毎度上演される人気です。情話ではありますが、難しく考えるならこの歌劇は共同生活体の中に逃げ込んで安息を得たいと願う人間と、異共同体という壁に弾き飛ばされた人間、そんな二人を通じて古い社会構造が悲劇を生んだと訴える作品だと思います。同じヤンバルに咲いた悲恋の民話はじうすい」と同じ底流を持つと考えられますが如何でしょう。
「島情話」では忘れられない大切な思い出があります。那覇の久茂地にある民謡クラブ「D」は指南役Sさんが連れて行ってくれたお店、Sさんが唄う「月ぬ美しゃ」などを聞いていると、島唄はヤマトンチュには唄えないと脱帽し、以来島唄は聞きに徹しています。発声、息継ぎ、小節、それに何と言っても発音し難いシマクトゥバ(小文字の発音が難しい)等等が理由ですね。或る晩このお店で沖縄民謡歌手の頂点の一角を担う、『想い』という大ヒットをとばし一世を風靡した金城恵子さんにお会いし、そのうえなんと金城さんの三線伴奏で「島情話」を唄わせてもらいました。CDは買っていましたが家にあり、色紙にサインを貰い、大感激で興奮気味の私に「田場盛信さんは金城さんのムトゥビレー(元ご主人)なのよ」とお店のR子さんから知らされました。「いやー、これは知らないとは言え大変ご無礼致しました」と恥じ入った私です。でも席は盛り上がり、「あの田場盛信がねぇ〜」などと金城さんはR子さんと笑いながら昔話をされました。私の伊江島の思い出には欠かせないエピソードです。次回は伊江島の四季の暮らしを「子育ては沖縄で」と移住されたご一家のお話を織り交ぜながらゆんたくさせてください。アンセーマタヤーサイ。

 

ウチナー口(沖縄方言)など解説 ※文中敬称を省略しました。お詫び申し上げます。

伊是名島・・ 尚円王(第二尚王朝始祖)出身地、版画家名嘉睦念さんの出身地でもあります。
「おもろん広場」で「是非あなたには行って貰いたい島です」のお言葉をMさんから戴き嬉しかった思い出があります。
クリティカルイレブン・・ 離陸後3分、着陸までの8分が危険性の増す時間という航空用語。
あまはいくまはい・・ あっちに行ったり、こっちに行ったり走り回る様子。略して「あまくま」
城山・・ 「ぐすくやま」か「ぐしくやま」かこの話は次回P音の話で登場予定です。
田場盛信・・ S20年具志川(現うるま市)生まれ。「歌謡調島唄の第一人者」「ソフト&メロウな島唄歌手」などが定評。『「島情話」は名曲』(神谷一義氏評)「島の女(ひと)」は大ヒット曲ですがウチナーグチ無しで失望。主婦層に人気が高い?三板の名手。
上原直彦・・ 県知事の名は知らなくてもこの方の名は・・といわれる沖縄歩く辞書。「民謡で今日拝なびら(チューウガナビラ)」は午後3時からの放送で不老長寿の人気番組。隣の車のドライバーも私と同時に笑っている。バックナンバー「沖縄の三宝」参照ください。
真境名由康・・ 明治22〜昭和57年、7歳で初舞台、組踊りや舞踏は玉城盛重氏に師事、歌舞伎などの本土演劇を研究して沖縄演劇界に多大の影響を与えた。古典舞踊真境名本流の創始者。
リリーフィールド・・ GWの頃、100万輪のユリが咲き誇る伊江島の名所公園。豪華絢爛で評判ですが、私は名も無い浜に潮風と遊ぶ可憐なテッポウユリに魅かれます。
湧出・・ 素晴らしい眺望です。次回写真で紹介させてもらいます。
伊江島のローマンス・・ 1916年(大正五年)史劇「伊江島のローマンス・女の執念」というセリフ劇を真境名氏が国頭村辺土名や伊江島を取材して歌劇にした・・・ワンダー沖縄(参考文献参照)。別名「辺土名ハンドー小」
伊江島ハンドー小・・ ハンドー小は辺土名に住んでいた。この浜に漂着した伊江島の男を助け介抱したことからこの悲恋が始ります。
はじうすい・・ 源河の男と有銘(東村)の女性との悲恋物語。バックナンバー「ザ・ビーチ・パーリー」参照ください。
シマクトゥバ・・ 島言葉、ウチナーグチです。9(ク)月18(トウ・ハ)日が記念日に制定されこの日は各地で島言葉を継承する行事が行われる。「ウヮー」(豚)が「ウワー」になってはいけません。「ウヮーバグトゥ」(余計な事、おせっかい)は難しい
想い(ウムイ)・・ 「恋しく思う気持ち」ですが、「妖しく燃え上る情念」のようなニューアンスを含蓄しているのでは。ドウカッテイな解釈です。
金城恵子・・ S23年具志川市塩屋生まれ、唄を聞いて育った、大城志津子の門弟。歌唱力、うたなさき、声の質・色気は非の打ち所なし。極東放送の大衆賞、沖縄テレビのゴールデン民謡大賞歌唱賞受賞など。
CD・・ タイトル「妖艶!女の歌金城恵子●想い〜風車情話」(マルフクACD36)。そう言えばあの時Dで、「妖艶」という言葉でも盛り上がりました。
ムトゥビレー・・ 元恋人の意味で使うこの言葉はウチナーンチュが敏感に反応する言葉です。その訳は色々ありますが「狭い!」と言われる沖縄社会が一番の理由でしょう。「ラジオ沖縄」の長寿番組「いいことありそうウイークエンド」で「ムトゥビレー」をテーマにすると、視聴者から来るFAXの量がすごいという。

プロフィール

楠 通志
1942年1月生まれ(みずがめ座 O型)。福山市出身、さいたま市在住。
1976年頃初めて沖縄入り。以来本島以外に、宮古島、多良間島、石垣島、与那国島、竹富島、波照間島、伊江島を訪問。自然風景写真を撮っている。
今年の目標は「原風景」に拘った作品作りで必然的に離島へと足をのばす事。伊是名、座間味、久高の各島。本島では山原や東海岸としたい。


シーブン(おまけ)

  1. 高知空港でドラスティックな胴体着陸をしたダッシュエイトーQ400は修理を終え、なんと下地島空港に着任。新任務は練習機としてタッチアンドゴーの訓練に使われるそうです。んみゃーち!
  2. 八重山商工卒甲子園のヒーロー金城長靖君はノンプロでも大活躍です。沖縄電力が九州地区3位で初の実力全国大会出場(15日から大阪で)にコマを進めるのに貢献しました。 チバリヨー!
  3. サシバが渡来する寒露も過ぎ、ミーニシが吹く頃となった沖縄、伊江島のイータッチューの西側ではハゼノキの紅葉が始まったそうです。ヤンバルで見たパジノキ(ハゼノキ)の赤さを懐かしんでいます(バックナンバー「ヤンバルほろほろ:前」を見てください) ユタシク!
  4. 県立博物館・美術館が新しくなって11月1日、オープンです。ご来館お待ちいたします。 メンソーレ!

参考文献等

「ウチナーのうた 名曲101選&CDガイド」 藤田 正編   音楽之友社
「琉歌の里めぐり」             青山 洋二編  郷土出版
「浮世真ん中」  http://www.interq.or.jp/leo/campus/naohiko20030104.html
「ワンダー」 http://www.wonder-okinawa.jp/019/japanise/enmoku/iejima/index.html
「沖縄おもしろ方言事典」        沖縄雑学倶楽部編  南風社


バックナンバー
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沖縄の原風景No.2
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